事例1-3 手帳の不更新による雇止め

Cさんは、精神保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠で働いていました。ところが、症状が寛解したため手帳が更新されず、会社からは手帳を持っているという条件での雇い入れなので次回の契約更新はしないと言われました。Cさんは、今まで通り配慮を得ながら働きたいと思っています。どうしたらよいでしょうか。

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事例の意図

精神障害者保健福祉手帳を持ち続けるには、2年ごとに認定を受けなければならず、症状が寛解していれば手帳は更新されません。手帳が更新されなかった場合のトラブルを防ぐため、支援者には意識的に更新の事前準備にあたっていただき、また、企業には、手帳がなくなる可能性を踏まえた雇用をしていただく必要があります。

福祉の視点から

手帳返上は、本来は喜ばしいことです。しかし、企業にとっては、法定雇用率の問題があるためなかなか受け入れがたいことかもしれません。
また、C さん自身も、配慮を得ながらの就労を希望しており、一般の就労者と同じ労働条件で就労できるほど完全な状態にはないようです。主治医と話し合いの機会を持ち、配慮がなくなったらどうなるのかということを整理しましょう。

 

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企業が、手帳がない状態(一般の就労者と同じ労働条件)では難しいという見解を持っているか、または、C さん自身が就労時間や環境等で配慮が必要であると認識して手帳は必要だと思っているが更新されなかったということであれば、主治医にも情報共有を行い手帳の再申請をお願いしてもいいかもしれません。
また、今回のような状況をつくらないための予防策として、手帳更新時期の3 ヶ月くらい前までに主治医、企業、ご本人、支援者とで話し合いの機会を持ち、手帳が更新されなかった場合の対応を確認しておきましょう。
いずれにせよ事前の相談がとても重要です。

司法の視点から

はじめに、障害者雇用枠を課されるのは、使用者であって労働者ではないことを確認しましょう。C さんには、障害者手帳を持ち続ける義務はありません。
この事例で、C さんは、働き続けることができる場合があります。会社が「契約を更新しない」と言っても、法律によって契約が更新されるのです。法律は、以下のような2段構えで、C さんを保護しています。
第1段階。会社がしようとしていることを「雇止め」(やといどめ、用語解説参照)と言いますが、次のような場合には「解雇」(用語解説参照)と同じように扱われます。一つは、明確な更新手続がないまま契約が繰り返し更新されてきた場合、もう一つは、季節に限定されずに長く続きそうな仕事をしていて、繰り返し更新されてきており、しかも更新のたびに労働者の意思が確認されるなど今後の更新を期待できた場合です(労働契約法19条)。
第2段階。「解雇」は、次のような2つの条件を満たさなければ、無効になります。一つは、Cさんに働く能力の欠如や職場のルールへの違反があるか、経営の建て直しのため他の努力では何ともできないのでどうしても人員整理をしなければならないなど、合理的な理由があること。もう一つは、理由に照らして C さんを解雇することが社会通念上も相当であるといえることです(たとえば、2、3回の遅刻はルール違反かもしれませんが、それで解雇するのはやり過ぎであり、相当ではないということになります)。
C さんが第1段階をクリアできるかは、今まで何回更新されたか、季節的なものではなく長く続きそうな種類の仕事をしているか、更新手続がされたかなどによります。
第2段階まで進めば、手帳を持たなくなったことは雇止めをする合理的な理由とは通常いえないでしょうから、他に雇止めをする合理的な理由がない限り、C さんを雇止めすることはできません。

用語解説

  • 雇止め(やといどめ)
    期間が決まっている有期契約の期間が満了した後、契約を更新しないことです。
    例:3年契約で3年間働いた後、「契約は更新しない」と言われた
  • 解雇
    労働契約を終了させる旨の、使用者からの申入れのことです。
    例1: 定年まで雇うと言われていたのに、定年前に「クビだ」と言われた(期間が決まっていない無期契約のケース)
    例2: 3年契約だったのに、2年経ったところで「契約を終わりにしたい」と言われた(期間が決まっている有期契約の期間満了前のケース)