事例2-22 迷惑メールの内容を信じて、金銭を払ってしまったAさん。その場合、お金を取り戻すことはできるのでしょうか?

発達障害のAさん(30代・女性)は、携帯電話をスマートフォンに変更しました。すると、毎日数十通の迷惑メールを受信するようになってしまいました。その中に、「ハワイ旅行に当選しました! あなた様には、旅行準備金として総額360万円を30万円ずつ12ヶ月に渡りお受け取り頂けます」とのメールがありました。Aさんはハワイに行きたいと思っていたので大変喜び、メールの内容を信じて返信をしました。その後、返信したアドレスから「氏名・口座番号などを登録フォームに入力して登録を完了してください」とのメールが届きました。その際、登録手数料1,000円を送金するよう指示があり、Aさんは登録手数料を送金しました。
次に、入金確認のメールと共に、「全登録を行うには完全手数料3,000円を入金してください」との指示があり、再度Aさんは手数料を送金しました。
その後再び360万円をAさんに振り込む手数料として「10,000円を入金してください」とのメールが届き、Aさんは手数料を送金しました。
その頃からAさんに落ち着きがなくなり、事情を伺うと、迷惑メールに返信して金銭を払っていることに周囲が気づきました。Aさんがこれまでに支払った14,000円はどのようにすれば返還できますか? また、支援者として何かできることはないでしょうか?

【事例の意図】

迷惑メールは魅力的な文面で人を惹きつけ、金銭や個人情報をだまし取ろうとするものです。障害の特性によってはその真偽の判断が難しく、本人も気がつかないうちに大きな被害に遭ってしまうことがあります。仮に被害にあった場合は何か手立てがあるのか、そして被害を防ぐためにはどのようなことをするべきか、日頃から意識する必要があります。

【支援者の視点から】

今後もらえるかもしれない360万円に注意を向けるのではなく、すでに支払った14,000円に意識をもっていけるように話をし、その14,000円は払わなくてよかったお金であることを説明する必要があるでしょう。そして実際の金銭を返還してもらう手続きを行ってくれる弁護士に相談に行こうと働きかけ、同行することができます。依頼するにあたって必要な書類を揃えるお手伝いをしたり、面談に付き添うことによってAさんが弁護士に相談しやすくする環境をつくっていきます。
また、同時にAさんが安心して落ち着いた生活を取り戻せるよう、今あるお金での金銭計画を一緒に立てていくことも重要です。今後同じような被害にあわないための対策をAさんと一緒に考えていき、分かりやすい簡単なルールをつくっていくと良いでしょう。迷惑メールを受信しないようにするためのスマートフォンの設定を、Aさんと一緒におこなうことも有効と思われます。一度お金を払ってしまうと同じ類のメールが多く送られてきてしまうことも考えられます。そもそも、お金をもらう際の手続としてお金を振り込まなければならないという仕組みはない、ということを話しておくことも重要です。お金を振り込むという動作は非常に慎重に行うべきであることを伝え、今回のことに限らず振り込む動作をおこなう際には家族や支援者に一度相談してからにしよう、というルールを決めておくのも良いかもしれません。

(地域活動支援センター 職員)

【弁護士の視点から】

最近、スマートフォンが携帯電話の主流になりつつありますが、それに伴い、詐欺の手口も巧妙になっています。その例の1つが、今回の事例のような、メールを使った詐欺です。メールは、当事者同士が直接会わないままやり取りができてしまいます。仮に騙された人が詐欺だと気がついたとしても、騙した人は、そのまま逃げ切ることが簡単に出来てしまいます。
民法上では、詐欺による取消し(民法96条)の意思表示を行い、返金してもらうことが可能です。取消しの意思表示は、内容証明郵便を相手方に送ることで行うことになります。
弁護士への法律相談は、一定の資力要件を満たす場合、法テラスを利用することで無料となります。もっとも、弁護士に依頼、交渉するとなれば、弁護士費用がかかってしまいます。弁護士を頼む場合、費用は決して安くないため、今回の被害額14,000円に比べて、弁護士費用のほうが高くなってしまいます。
そもそも、先に述べた通り、メールによる詐欺は、騙す側が身元を特定されないように行われているため、現実問題として、騙した相手方の居所を見つけ出すことは困難を伴うことが予測されます。
そこで、今回の事例の場合、詐欺という犯罪被害に遭ったということで、警察に被害届を提出し、警察に捜査をしてもらって騙した人を探し出してもらうという方法もとりうるでしょう。
もし、メールで振込先として口座が指定されているような場合は、警察に口座の情報を伝えましょう。口座の情報から口座の名義人を特定することができ、そこから騙した人を見つけ出すことができるかもしれません。
詐欺被害に遭ってしまうと、騙した人からお金を返してもらうことは基本的に難しい場合が多いので、詐欺被害に遭わないよう予防することが一番大切です。しかし、詐欺の手口はどんどん巧妙化されています。支援者としては、詐欺の手口に関する最新の情報を伝える等して、日頃から注意喚起しておくことが必要でしょう。消費者トラブルの情報は、「独立行政法人国民生活センター」のホームページ等で入手することができます。詐欺の手口は日に日に進化していきますので、支援者の方は、消費者トラブル情報は常に意識しておいてください。

(弁護士 橋本佳子)

【参考リンク】

【法テラス】
無料法律相談 要件確認体験ページ
http://www.houterasu.or.jp/nagare/youkenkakunin/youken_check.html

【独立行政法人国民生活センター】
各種相談の件数や傾向
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/index.html