事例2-24 施設利用者のAさんが、買い物中にトラブルを起こしてしまいました。家族や支援者は何ができるでしょうか?

発達障害のあるAさん(20代・女性)は、雑貨店でマグカップを購入しようと見ていました。その時、Aさんの携帯電話が鳴り、電話に出ようとしたAさんは慌ててしまい、マグカップを床に落として壊してしまいました。
電話の内容が終了したAさんは、壊してしまったマグカップをそのままにして、店内を出たところで店員さんに呼び止められました。通報を受けた警察官から家族に連絡が入り、ご家族から通所施設に今後の対応について相談の電話が入りました。Aさんに対して、支援者として何ができるのでしょうか?

【事例の意図】

障害のある人が地域で暮らすなかでトラブルが起こってしまったとき、家族や支援者は突然のことにどのように対応すべきなのか、大きな不安を抱えることになります。正しい情報を得ることは不要な混乱を避け、適切な援助を行う上で重要です。法的な対応について検討しつつ、支援者は本人の障害特性をふまえ、今後の支援を検討していく必要があります。

【福祉の視点から】

発達障害のある人は、社会に適応することや想像すること、コミュニケーションが苦手などの障害特性があります。具体的には、社会常識やマナーを理解することが苦手、想像することが難しいために臨機応変な対応が苦手、と言うことが挙げられます。Aさんの事例から障害特性の考察を行うと、社会性と想像力の2つの障害特性が影響していると考えられます。
Aさんが慌てて店内の商品を破損してしまったのは、事実です。Aさんがどうすればよかったか、一緒に振り返りをして、
①壊してしまった場合は、店員さんに破損させてしまったことを伝えること。
②店内では、携帯電話が鳴っても出ない。改めて、落ち着いて話ができる場所に移動して電話に返信すること。
などを一緒に確認しましょう。そして、再び同じようなことを発生させないように対策を立てることが必要と考えます。また、日常生活では、さまざまな場面で臨機応変な対応が求められる場合や、想像している以上のことが発生する場合もあります。そのためにも、日ごろから慌てずに対応できるようにSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)などを活用して対応の仕方を身に着けることも必要です。

(就労移行支援事業所 職員)

【弁護士の視点から】

まず、警察から連絡があったということですので、Aさんが罪に問われるのではないか、と心配されるかもしれません。
しかし、刑罰の対象となるのは、基本的には、故意による犯罪のみであって、過失による行為は法律に定めがある場合だけ罰せられます(刑法38条)。この点、器物損壊罪(刑法261条)には、過失犯を処罰する規定はありませんので、Aさんが刑事責任を負うことはありません。
もっとも、民事上は、過失があれば、不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになりますので(民法709条)、壊してしまったマグカップ相当額のお金を支払う必要があります。
今後の対策として、割れ物を扱う店に入る場合の注意、特に携帯電話の呼び出し音等について、Aさんとよく話し合うとよいと思われます。

(弁護士 中田雅久)

【参考リンク】

◎SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)
自閉症、学習障害、ADHD、ダウン症など発達障害や発達が気になるお子さまを持つ家族の応援サイト ふぁみえーる
https://famiyell.net/knowledge/learn/intervention#link5

◎発達障害の情報
「国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター」
http://www.rehab.go.jp/ddis/