2015.09.16定例会 部屋に閉じこもってしまったEさんにどう接したらよいのか

事例概要

花子さん(70代女性)は、息子夫婦(長男の太郎さんとその妻Eさん、2人とも40代)と二世帯住宅に同居しています。太郎さんとEさんはいずれも統合失調症で、それぞれ別々の病院に通院しています。ある日、太郎さんの症状が悪化して医療保護入院し、花子さんとEさんの2人暮らしになりました。
Eさんは服薬管理が出来ており、その限りでは安定していますが、同居の花子さんに対しては攻撃的であり苦慮していました。
最近、突如として、Eさんが1階の自分の部屋に内鍵をかけて閉じこもってしまいました。そこには、花子さんに必要なものがあるのですが取りに行くこともできず、会話にも応じて貰えません。どうしたらよいのか困り果てた花子さんは保健センターに連絡しました。すると、近隣の地域活動支援センターを紹介されました。

事例の意図

障害を抱える人にとって一緒に暮らす家族がいることは大きな支えになりますが、支える家族にしてみると、外からは予測もできない困難に日々直面していることもあります。高齢化社会では障害者を支える家族も高齢であることも増えてきており、家族だけでその困難を抱えることはお互いの疲弊を招いてしまいかねません。障害者とその家族を含めて、地域で支える方法を考える必要があります。

参加者からのご意見

相談者は花子さんですが、「支援の対象は誰になるのか」という視点を持つことが大切です。花子さん、Eさん、双方向のアプローチが必要になることが想定され、最終的には家族単位での支援を行うことになるかと考えられます。花子さんやEさんなど、本件に関わる方からの話をしっかりと伺う事が求められますが、先入観を持つことなく見立てを立てる必要があります。
そのためには、「先入観を持っている自分を意識すること」や、「普通こうなるはず」という感覚が大切になります。相談者は、自分にとって不都合な話をしないこともあります。「普通こうなるはず」と支援者が考えることと違う話を相談者がするのであれば、違う理由をしっかりと聞きます。自分の常識を理解しつつ、マイノリティの常識を聞き取り、一見不条理に見える行動もその人の選択があるということ意識することが大切です。

法的な立場より

自室に引きこもっているEさんに対して、病院に相談するなどすべきことをしていれば、仮にEさんが栄養失調等で亡くなってしまったとしても保護責任者遺棄致死等に問われる可能性は低いでしょう。しかし、花子さんが何もしないまま放置していたとなると保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性が考えられます。
Eさんが40代であることを考えると、花子さんが保護責任者といえるかどうか疑問です。Eさんは元来自立されている方ですので、花子さんに保護責任者遺棄致死罪が成立しない可能性の方が高いでしょう。

Recoveryの観点から

Recoveryという観点から考えると、行動には意味があり、その意味を考えなければなりません。Eさんが自室に閉じこもっているという行動も、Eさんの立場になって考えると自身の治療のための手段の一つかもしれません(WRAPでは、これを『治療の道具箱』と言います)。もしそうであるならば、閉じこもっているという行動を良しとせず、止めようとすることは適切とは言えないでしょう。治療のための手段かどうかを見極めるためには、「Hope(引きこもることに希望を感じているか)、Responsibility(本人が選択しているのか)」という観点から、本人の状態を考えていくことが必要です。そして、引きこもることが治療の道具として機能しなくなった際に、周囲が他の道具や手段を提供し、置き換えていくことが大切になります。